|
評価:
淵田 美津雄,中田 整一
講談社
¥ 1,995
(2007-11-30)
|
ちょっと前の新聞の書評に載っていたので、読んでみました。
内容はタイトルの通り、真珠湾攻撃の航空部隊の総隊長である淵田美津雄の自叙伝ですが、それに中田整一氏の解説が要所ゝについている感じですね。
淵田美津雄は、異例の降格人事で真珠湾攻撃の航空部隊の総隊長を任じられますが、それは逆に彼の力量上の事であって、まさしくこの時代の航空部隊の前線指揮官としての統率力の力量は最高レベルであったことの証です。
それだけでも、真珠湾攻撃に関する本人の談が載っている自叙伝であれば読んでみる価値はあると思うのですが、第二部とも言うべき戦後のクリスチャンへの回心もなかなか考えさせられるものがあります。
実は、この本の価値を高めているのは、中田整一氏の「解説」と「あとがき」ではないかと自分は思えています。
自叙伝となるとどうしても、個人の思い入れが強くなります。
読んでいて自分もその世界に引きずり込まれたのですが、中田整一氏によりその当時の状況の解説及び分析が行われ、冷静に考えることができました。
特に「山本五十六」に対する考察については、この対比が鋭く見ることができます。
彼が「回心」してからは、どちらかというと人間心理の描写の比重が「外国人」と関係におかれるのですが、日本人と彼を取り巻く状況については「あとがき」において伺う事ができます。
またあとがきにおいて、彼のアイデンティティを支えるものについても、やんわりとしたニュアンスですが、述べられているところも非常に興味深いところではないでしょうか。
こういう戦史ものが初めてという方には、ちょっと敷居が高く感じるかもしれませんが、「自叙伝」+「解説」という内容では、非常に良い本だと思います。
これぐらいの内容があるとハードカバーの値段に十分見合うものがありますね。
ちなみにこの本を読んで、映画「トラ・トラ・トラ」を見ました。
ちょっと前にヒットした、ハリウッド某真珠湾攻撃映画は、正直ひどい出来だったのですが、こちらはまだ良いほうです。
当然、結構昔の映画ですので、物足りない方は多いと思うのですが、航空部隊の編隊飛行や低空飛行などは、迫力十分です。
不謹慎かもしれませんが、払暁の真珠湾攻撃への航空隊の出撃シーンは、大変美しい映像です。
真っ暗な甲板に、轟くエンジン音、光るエンジンの光。徐々に日の出と共に、発艦のシルエットが浮かび上がってきて、航空編隊の姿が浮かび上がる姿。
昔の映画ですが、興味と時間がある方は、このシーンは見る価値アリだと思いますよ。